いつかそんな日がくればいい。【短】
俺が謝ると、白田さんはフンッと鼻を鳴らして離れ、また黒崎達が去って行った道の先に目を向ける。
「もうっ!何あれ頭くるっ!普通、同伴者放っていく!?」
コレ、本当にあの白田さん…?
俺の見解と大分掛け離れてるんだけど…。
目の前の彼女は、おしとやかは疎か、ドカッと男らしく石垣に足を組んで座る始末。
浴衣がはだけて、細くて色白の足が覗いているけど、俺は今それどころじゃない。
鳩が豆鉄砲を食ったような顔。
ついこの間の模試に出てきたな。なんて…
俺は今まさにその状態。
「松田君も松田君よ!何、譲っちゃってんの!?本来、松田君がああするべき!」
ビシッ!と厳しい目で俺を指差す彼女に、
「あ…そうだね。ご…ごめん」
と、また謝る俺。
俺だって…そうしたかったさ。
怪我した吉川を躊躇なく抱き上げた黒崎。
そんな黒崎の顔を見たとたん、まるで自分の居場所に帰ったかのように、酷く安心した顔で泣き出した吉川。
吉川が、あんな風に泣くなんて知らなかった…。
それを動揺一つ見せず、優しくあやす黒崎。
あの光景が頭を離れない。
俺はあんな風に、吉川に触れることなんて出来ない。
あの二人は、それだけ近い距離にいるってことなんだ。
そう思い知らされて、気付いた時には彼女を諦めようとする俺がいた。
情けないって言われたらそれまでだけど、仕方ないじゃないか。
二人の間には、割って入って行けるような隙間なんてないんだから。