いつかそんな日がくればいい。【短】
りんご飴

「……」


「……」


お囃子のBGMが妙に響いて聴こえる。


夏の夜独特の蒸し蒸しとした暑さも相まって、頬を一筋の汗が流れる。



俺は、すでに後悔をしていた。


きっ、気まずい…


かき氷屋の屋台の前、俺はなぜか白田さんと肩を並べて歩いている。


母親にかき氷をねだる子供の横を通り過ぎるその間も、俺達は終始無言が続いた。


そりゃそうだ。


実を言うと、俺と白田さんはクラスも違けりゃ話した事もない。


お互い何となく名前と顔は一致するけれど、ただそれだけだ。


こんな所で、お祭りを一緒に堪能出来るような仲では微塵もない。


それなのに俺は、何で彼女と回ろうと思ったのか…


自分でも自分自身が謎過ぎる。


そして彼女も、なぜ素直に俺の隣を歩いているのか……。


あー、いや。


素直なんかじゃなかったな。


うん。


遡ること、10分程前––––––




「やだ。」


「え…」


「私、もともとお祭りってあんまり好きじゃないのよね。
人混み嫌いだし、疲れるし」
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