いつかそんな日がくればいい。【短】
りんご飴
「……」
「……」
お囃子のBGMが妙に響いて聴こえる。
夏の夜独特の蒸し蒸しとした暑さも相まって、頬を一筋の汗が流れる。
俺は、すでに後悔をしていた。
きっ、気まずい…
かき氷屋の屋台の前、俺はなぜか白田さんと肩を並べて歩いている。
母親にかき氷をねだる子供の横を通り過ぎるその間も、俺達は終始無言が続いた。
そりゃそうだ。
実を言うと、俺と白田さんはクラスも違けりゃ話した事もない。
お互い何となく名前と顔は一致するけれど、ただそれだけだ。
こんな所で、お祭りを一緒に堪能出来るような仲では微塵もない。
それなのに俺は、何で彼女と回ろうと思ったのか…
自分でも自分自身が謎過ぎる。
そして彼女も、なぜ素直に俺の隣を歩いているのか……。
あー、いや。
素直なんかじゃなかったな。
うん。
遡ること、10分程前––––––
*
「やだ。」
「え…」
「私、もともとお祭りってあんまり好きじゃないのよね。
人混み嫌いだし、疲れるし」