そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~
瓢箪からこま

私は優人に、これから始まる教育プログラムの説明を、午後からすることになっていた。

法務部には、いろんな仕事があるけれど、その中に、社員の研修というのもある。

研修を終えれば、すぐに建設現場に戻っていく優人のような人たちは、
現場と関係がある契約関係の実務が中心の研修プログラムを行っている。


私は、優人とテーブルを挟んで、小会議室で向かい合って座っていた。

横に並んで座ればよかった。そうしたら、正面からまともに見られることなかったかな。


彼は、私の顔をまっすぐ見据えている。

そんなに見なくていいってば。

年取ったなとか思ってない?


そんなこと思ってないか。
作業中に冗談をいい合うのとは違って、彼の表情は真剣そのものだ。


見られてるからって、どうだというのだ。
落ち着いて行こう。


法務の教育プログラムなら、何度もやっている。
私は呼吸を整え、何度も口にした順番で話しをすればいい。


「建設現場でも、契約書を取り交わすことは、日常的に行われているけど、

たいていは、何が書かれているのか、内容など理解しないまま、添付された書類にサインや印鑑だけ押しています。

法務部は、こういう典型的な契約書では間に合わない場合、
契約に問題が起き個別に対応しなければいけない場合、対応に当たります」


優人は、渡した資料を見ながら、黙って私の話を聞いている。


長谷川さんの説明によると、今後、事務方の人材を、お金を扱う経理、契約などの法務に通じた人間に育てる事に力を入れていくらしい。

その為にも、各専門的な部署で、教育を引き受け、専門的な事務処理を教え込んでいく機会が増えるって言ってたっけ。

< 34 / 173 >

この作品をシェア

pagetop