そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~
「長井も頑張ってるけど、長谷川さんのような人には敵わないよ」
「ふ~ん」面白くない顔。
優人は、やる気なさそうにファイルをちらっと見る。
「亜湖は、長谷川課長を買ってるんだな。どうして?そんなに彼のこと気に入ってるの?」
「優人がここに来るまで、一緒に仕事してたんだもの。そりゃよく知ってるよ」
「いや、そういう意味じゃなくて」
「ん?」
「あのひと、こういうの覚えるのが得意だった?それとも、君が彼にだけ特別に教えたの?」
どうしたの?トゲのあるいい方……
「特別に?どういう意味よ。何よ特別って。そんなことするはずないじゃないの。
そもそも、課長は私の助けなんかいらないって言ってたくらいだし」
「ふん」
「何?優人?もしかして、どうしても覚えられないから、特別なやり方で教えてほしいってこと?」
私は、笑いなからいう。
「こんなの覚えられるかよ。何か、こう、すぐに頭に入る方法ないか?」
「そんなもの、あるわけないじゃん。地道に頑張るだけ。それとも、降参して次の研修先に行く?」
「そんなこと、するわけないだろ?」
煽れば、向きになるのは分かってる。
優人は、無理だとか、受け付けないと思ったものでも何とか理解しようと必死になる。
入社してすぐ、優人と最初に配属された作業所が同じだった。
気さくで人当たりのいい彼は、冗談をいいながら、すぐに気難しい職人さんたちの中に入って打ち解けた。
こんな風に、慣れない仕事で頭をかきながら一生懸命な姿を見ると、どんな頑なな気持ちを持った人でも手を差し伸べようとする。
そういうとこは、とても敵わないし、あんたの良さだよ。と思った。