そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~
その後も、体が重くて酷く疲れて帰ってきた。
どうやって家まで帰ってきたのだろう。
その後は、自分が何してたのか、記憶にない。
優人、変に思ったかな。
そもそも、もう優人って呼べないか。
そういえば、向こうでどうしてたの?
なんて全然聞いてないや。
もう、とっくに付き合ってる人がいるのかも知れない。
3年も離れてたんだもの。それが普通だ。
関西に残してきたのかな。
次の朝はベッドから起き上がれなかった。
体に力が入らない。そのあと、夜遅くに珍しく熱が出た。
午前中、病院に行って薬をもらったけれど、疲れから来るストレスだろうと言われた。
私は、今、ワンルームに一人暮らしで誰も見てくれる人もなく、ただベッドに入って眠っていた。体が重くて、何もする気力がない。
夕方、紗和がお見舞いに来てくれた。
私は、紗和が呼び鈴を鳴らすまで、死んだように眠っていた。
風邪薬、お粥のレトルトパック、卵、紗和は、思い付くまま買い物してきたみたいだ。
「大丈夫なの?」
紗和は、本気で心配してくれる。
「大丈夫じゃない……」
「何があったの?」
正直何も話したくない。
でも、少しは話した方が、気分も楽になるかもしれない。
「彼に……元に戻りたいって言われたの」
「前みたいに、仲良くしたいって事でしょ」
そうだよ。紗和。
「同僚としてっていう意味だよ」
「口を利かない方がおかしかったんでしょ?仲直りするのがどうしていけないの」
「仲直りするってことは、前の関係を壊して、新しく作り直すんだよ、紗和」
「だから、それのどこが嫌なの?」
「きっと、思った以上に期待してたんだね。
私たちの間には、まだ何かあるって。
私と彼とのことは、何か特別だって。でも、違った。
3年も会わなかったんだから、
関係なんて切れてなくなってるのは当たり前だよねえ。
昨日、優人に、もう……
付き合ってるわけじゃないって、はっきりさせられた」
うすうす感じてたのだ。
彼に会って、あの時はごめん、今はもう大丈夫なの?
なんて声をかけられたら、生きていけないと思ってた。
「亜湖、ねえ、こんなとこで、うじうじ考えてないで、長井に自分の気持ちぶつけてみれば……」
「分からなくなって来たの。前は、終わりたくなかったから、会いたくないんだと思っていたのに。でも、いざ、そう言われると、悲しいっていうより、何も感じない。そっか、そうだよねって思うだけ。長井に彼女がいるって聞いても、そうなんだって、なんだ。平気だって思えるよ」
「亜湖……」
「私、優人と本当に別れたんだ。ずっと、逃げてた彼の亡霊にやっと、とどめが刺せたんだ」