そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~
長井と二人で、定食屋さんに入った。

どこに行く?なんて、
お互いの好みを、確かめるまでもなく、
「ここでいいか」って長井が決めた。

前と違って、入るか入らないか私の意見は聞いてくれる。

大袈裟に、おごってやるって言った割には、会社の近くにある小さな定食屋さんだ。

彼は、上着を脱いで長袖のシャツのボタンをを外し腕まくりした。
長井は、メニューを見てたった三秒で決めた。
「食べたかったな。ここのフライ定食」


「そう?」

ちょっと待って。サーモンフライか、白身魚か迷ってるの。
わかったから、話しかけんな。


「うまいものなんて、どこにでもあるけどさ、馴れた味がいいと思うよ。俺、白身魚だから、亜湖はサーモンだろ?後で一切れやるよ」


「うん」


「亜湖……本当なのか?」


「ん?」

おしぼりで手を拭きながら、何が聞きたいのよ。


「何でかなあ。なんで、よりによって亜湖なんだ?」

さっき、部長に言われたこと?
だったら、よりによってと言われても、なんて答えていいのかわからないよ。


「いきなり、なによ。そのひどいいい方」
私も、おしぼりで、
手を拭きながら言い返す。


「だって、他にもいるだろうに。亜湖なんかより、もっときれいで相応しい人が……」


「何の話?おしぼりで、顔拭いてあげようか」


長井は、すでに笑い出していて


「いや、別に……いいよ。それは、勘弁してくれ」


「教育担当のことなら、私じゃない方がよかったってこと?
だったら、課長に一緒に仕事したくないって言ったら?」



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