そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~


「違うって。亜湖に不満があるわけじゃないって」長井は、頭をブルッと振った。


「じゃなに?私じゃ、乗り気じゃない?もっときれいで相応しい人のところに戻りたいとか?」冗談にして笑う。もう、どうでもいいや。


「ち、違うって」


言葉が見つからない、とでもいいたげに、もどかしそうに言葉を探してる。


「いや、そうじゃないって。教育自体は必要だと思ってるさ」


「気が向かないなら……研修なんて、途中で止めても構わないわよ。資料だけ渡しておこうか?」


「どうしてそんなに、向きになってるの、亜湖?」



「どうしてって?」私じゃだめだっていうからよ。


「せっかく期待して……何でもない。会社辞めた方がいいのかなって思ってるだけ」

長井が、まったく考えてなかったみたいに、本当に驚いていた。


「会社辞めたいって?なに、それ、本気なの?」

長井と同じプロジェクトで、ずっと顔を合わせることになるって聞いて思いついたんだけど。


「どうなんだ?答えろよ」

長井近すぎ。少し離れてよ。


「わかんない。だから、まだ、決めたわけじゃないって」

長井は、急に考え込んだ。
そして、いいにくそうにいう。

「この話、長谷川課長に話してるの?」

課長がどうだというのよ。


「ええ……多分。
話したことがあると思うけど」


「そうか……長谷川課長とずいぶん親しいんだね。将来のこと相談するくらいに」

将来のこと?
そんな話、したっけ?

話しをしたから、どうだというの。

「それが、どうかしたの?」


「いや、別に。何でもないって。
それ、 もらうよ」


< 50 / 173 >

この作品をシェア

pagetop