そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~
会社の近くのお店に、管理部の若手の多くが、畳の部屋にテーブルをくっつけて輪になって座る。二十人ほど人がいる。
私は、紗和を探して彼女の近くに座ろうとしたけど、管理部全体の飲み会で、人数も多いから彼女は裏方として走り回っていて、店側とやり取りで忙しそうだった。
でも、みんな主役の一人、長井が遅れていて乾杯もせずにお預けを食らっている。
「由奈ちゃん、もう始めたら?」
別の課の男性に言われて、由奈ちゃんが答えた。
「もう、始めてもいい時間なんですけど、肝心な長井さんがまだ、来てなくて……」
と由奈ちゃんが言うと、何人かが私の方を見た。
長井は、打合せだと言って、終業時間の少し前にフロアを出ていった。
その事は、由奈ちゃんにもちゃんと伝わっているはずである。
「亜湖先輩、長井さんから連絡ないですか?」
ちょっと離れた位置から聞かれたから、私は、大きく首を振った。
私に、あるわけないでしょう。
長井の事だと、どうしてみんな、私に尋ねるのだろう。
結局、長井が来ないまま歓迎会が始まった。