そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~
私の隣の席は空席だった。そこへ、見たことのない別の課の男性がやって来て、
「ここ空いてますか?」と尋ねてきた。
私は、誰かを待っていた訳じゃないから、どうぞ空いてますと答えた。
男性は、軽く会釈をして話し出した。
「あの……俺、経理課の太田といいます。あの……法務課の緑川さんですよね?」
年は、私より少し上。真面目そうな経理マンって感じだ。
私は、少しだけ愛想よく笑って答えた。
「はい。そうですけど」
何で知ってるのだろうと、疑問に思う。
「やっぱり、そうだ。初めまして。えっと、G県の旅館の件、営業と組んでやるって事は、聞いてるかな?」
「はい。部長からちらっと」本当に、ちょっとですけど。
「営業は、長井が担当するんだけど、経理の担当は俺なんだよね」
「はあ。そうですか」
「俺、聞きたい事あるから、法務担当者と一度、打合せしたいってずっと言ってるのに、長井が全然進めないから……よかったここで、会えて」
「そうなんですか?」
「緑川さんは、別に何も無いですよね?」
「何も無いって?」
「長井と付き合いとかは……」
「もちろん」
「ああ、なんだ。じゃあいいんだ。やたら、緑川さんへのガードが固いから、もしかしたらあいつの彼女だったりしたら、面倒だなと思って。違うんだね。なら、いいか。
えっと……今度、打合せしませんか?どうしてもチェックしてほしいとこがあるんだけどな。長井に言っても自分が確認するっていうし。まあそれでもいいんだけどね。
それに、緑川さんにも会ってみたかったし」
「はい」見たまんま、経理マンは結構チャラそうだった。