そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~
長井は、私に言われた通り、立ち止まって私の顔をのぞき込んだ。
気分も悪くて、まともに長井の顔を見ることができなかった。
私は、ふらついて、さらに足元が覚束なくて、長井の腕に寄りかかった。
「もう、いったい何やってんの!!」
なぜか、長井が急に怒り出した。
何?
いったいどうしたの?
彼に寄りかかった事を怒られたんだと思って、私は、慌てて体を離した。
「ああ、ごめん心配かけたね。仕事でかかわりがあるって聞いて、嫌だって強く言えなかったの」
酔っぱらって、だらしなく歩いてることだけじゃなくて、太田さんに付け入られたこと怒ってるんだと思って、それも謝った。
「ごめん、大きな声出して。亜湖は、いつもそうだろ?頼まれると断れないんだ」
彼は、怒りを引っ込めて、今は、私を優しく引き戻し背中をさすってくれる。
「ごめん、その通り。迷惑かけてすみません。長井、もう大丈夫だから。私、ここで失礼します」駅に向かうなら、駐輪場と反対の方角に行かなくてはならない。
「ちょっと、亜湖、どこ行くの」
「自転車取りに行かなきゃ」
長井の表情を見て、まずことを言ったと思った。
「はあ?なに言ってんの。これから自転車で帰るのか?」
今度は、怒りを通り越して、驚いているみたいだ。
「大丈夫。ちゃんと飲酒運転はダメなの知ってるし、家まで引いて帰るから」
私は、長井に誤解を与えないように、法律をちゃんと守ってることを説明する。
「何考えてるの。あんた、阿保なの?まったく。亜湖、自転車どこに止めてるの?」
ちゃんと説明したのに、彼は余計あきれ顔で、話になんないとつぶやいている。
「会社の近くのビルの地下の駐車場」
「地下?それ、どこだよ?」
「会社の方まで戻らないといけないから、長井はここでいいよ」
「いいよ、じゃなないだろ」
すでに、驚きは冷ややかな視線変わって、私を見下ろしてる。
彼は、一人で取りに行くという私を、怖い目でにらみつけると、強引に腕を捕まえたまま、駐輪場までついてくるつもりだ。