そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~
地下の駐輪場は、みなとみらいのビル群の海沿いの公園の地下にある。
いつもなら、時々すれ違うくらいの人は歩いてるんだけど、今日に限っては人っ子一人いない、寂しい場所だった。
昼間は風光明媚な美しい公園だし、半分地下になった明るい場所なんだけど、夜の遅い時間、しかも天気の荒れる前の時間には、明るい昼間の様子とは様変わりして、真っ暗で怖い場所だった。
これは、一人で来てたら、何があっても文句が言えない。
私は、ポツンと止められた自転車を見つけた。
長井が駆け寄って、自転車を確かめる。
「あれ?この自転車まだ使ってるんだ」
よく覚えてたね。
「うん。電池とタイヤは交換したけど」
新しいのに変えようと思ったこともあったけど、やっぱり、長井が選んでくれたこれがいいと思って直して使っている。
「うん。やっぱりいいよな、これ」
「うん。あの時、長井の意見聞いといてよかった」
「そっか」
駐輪場を出て、暗い道を歩く。
電車に乗るなら、駅の方向かって遠回りして行かなければならない。
「長井、ありがとう。ここでいいよ」
「どうやって帰るの?まさかそのまま引いてくの?」
「うん。明日取りに行くの面倒だし」
「ダメだ。亜湖の家まで、暗い道通ることになるだろ?そのまま帰るなら送ってく」
送っていくって、気軽に言うけど。結構な距離だ。
歩いて帰るなんて言う時点で、正しい判断していないと思えるようになった。
「ええっ?でも、家に着くころには電車なくなるよ」
「そんなこと気にしてる場合じゃないだろ?」
「いや。そんなことさせられないって」
「いいから、黙って歩けよ。さっきみたいに絡まれたらどうするんだよ」
「でも……」