現代妖怪会談
おにぎりはどんどん減って行く。

もう風呂敷の底が見えてきている。

キツネが手に持っていたおにぎりを食べ終わると言った。

「それにしても、良い案が浮かびませんね…」

犬神は、新たにおにぎりを風呂敷から手に取ると言った。

「都会に出ていける様な場所があれば良いが。」

タヌキが頬張りながら言う。

「カップルの集まる所なら、薄暗い所も多いし、安全やし、どうやろか?アベックの集まる所。」

キツネが言う。

「今どきなかなかアベックって聞かないですけども、良いかも知れませんね。」

犬神が言う。

「夏祭り、花火大会の後なんかは、絶好かもしれんかや?」

キツネが言う。

「うんうん、確かに。出ていくのには最高かも…見てもらえるし、男女に見られると言うのも良いですね。」

タヌキは、また新たなおにぎりを食べながら言う。

「男女に一緒に見られるのは、なかなか出来ることじゃないから良いんとちゃうかな?あとは、どれだけ怖がらせて噂をながさせるかやな。」

犬神がおにぎりをまだ手に持ちながら言う。

「草履を切ったり、浴衣を切ったりしてはどうかや?」

キツネが言う。

「古くさい手法ですが、そうなると…鎌鼬や黒髪切りや、網切りになりますかね?」

犬神が再び言う。

「花火大会なら、川沿いで濡れ女と牛鬼に頑張ってもらうかや?」

タヌキが最後のおにぎりを手に取ると言った。

「牛鬼はあかん!あんな荒々しいヤツに任したら、見た人間みな魂抜かれてまうで!?増してや、濡れ女とコンビ組ましたら、テンション上がり過ぎてエライことなってまうで?」

キツネが風呂敷を見ると、おにぎりが全て無くなっていることに気づく。

「あれ?おにぎり…」

タヌキがおにぎりを食べながら言う。

「ん?最後は犬神はんやで?」

犬神は、手に持っているおにぎりと風呂敷を交互に見て言う。

「あれ?ワシが取った時には、まだあったがじゃ?」

タヌキがおにぎりを完全に食べ終わると言う。

「そんなわけないやん!犬神はん食い過ぎや!最後ぐらいは持ってきたキツネはんに渡さんと!」

犬神が、「えっ?」と言ったか言わないかの一瞬の刹那、タヌキの手がおにぎりに伸びて犬神は、おにぎりを奪われる。

タヌキは、おにぎりをキツネに握らせると、「キツネはん最後は食べなはれ!」と言った。

犬神は、何が起こったのかわからず口を開けてキツネの口に運ばれるおにぎりをジッと見ていた。


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