現代妖怪会談
タヌキがキツネに向かって言う。

「口寄せ?人間が依代になって先祖の霊を降ろして喋らせるヤツかいな?」

キツネは笑顔になって言う。

「そうです!要するに!」

犬神が一瞬タヌキの顔をみてからキツネを見る。

「要するに?」

キツネは犬神を見て言う。

「イタコとか、ユタとか言われる巫(かんなぎ)の者に、学者達を降ろしてもらえば良いんですよ!」

犬神は、少し考えると声を出した。

「おぉ~!」

キツネは続ける。

「しかし、ひとつ問題が…」

タヌキが眉間にシワを寄せて言う。

「…問題?」

キツネが言う。

「私たちが行くのはマズいわけです。人間に取り憑いてもバレてしまえば払われてしまう可能性があります。」

タヌキが言う。

「確かに…人間ってのは昔から俺たちに手厳しいからな。」

犬神がキツネに聞く。

「なぜバレるのがじゃ?」

キツネが言う。

「理由はたくさんあります。」

タヌキが「う~む」と言いながら割って入る。

「まずは、取り憑いた人間に俺たちの仕草や表情が出てまうわな…」

キツネが言う。

「私たちの場合、完全に顔に出てしまいますね…タヌキさんの場合、大酒飲みになるし大きい口を叩いてしまいますね。」

タヌキが言う。

「キツネはんは、ケーンケーンって鳴いてまうやろ?」

キツネが言う。

「そんな頻繁に言いませんよ?」

タヌキはなぜか怒り口調で言う。

「油揚げで尻尾出てまうし、四足であるいてまうしなぁ。」

キツネもイライラし始めたのか、タヌキに突っかかるように言う。

「犬をけしかけられたら逃げるしか脳がない人に言われたくありません!」

タヌキが怒髪天で言う。

「そりゃお互い様やろが!!キツネなんかすぐに犬に匂いで見つかって噛み殺されるのがオチやわ!」

キツネは顔を真っ赤にして言い返そうとした時、犬神が割って入る。

「お互い犬が苦手なんじゃから、そこは引き合いに出さずに…」

と、少し自慢げな顔をして言うと…

「じゃかましわ!このイヌコロが!」
「黙ってて下さい!まだ首輪の後が消えないバカイヌ!」

タヌキとキツネに同時に言われる。

犬神は少しだけ涙が浮かんで下を向いてしまう。

キツネが咳払いをひとつすると言う。

「とにかく、バレない方法を見つければ良い方法だと思うのです。」

まだイライラしているタヌキは歯軋りをしながら我慢して言う。

「そうやな!身内でケンカしてる場合ちゃうわ。」

キツネが下を向いている犬神を見ると声をかける。

「犬神さん?どうしました?」

その声にタヌキも犬神を見て言う。

「どないしたんや犬神はん?急に鬱にでもなったんかいな?」

犬神は…

「いや…別に…」

と言うのが精一杯だった。





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