健康診断の甘い罠
人生何が起こるか分からない……確かにそうかもしれないけど私が男の人を好きになれる日なんて来るんだろうか。
そう思いながら、午後の健診も頑張ろうと背筋を伸ばして私は健診の準備を始めた。
そして午後の健診が始まって午前中よりはさすがに受ける人が少なくて少しホッと息をつく。
「千紗ちゃん、もうちょっとだから頑張ろうね」
高倉さんに励まされて私は頷く。何とか一人も失敗しないでここまできたし。
きっと来てもあと数人だと思うからもうちょっと頑張ろう。
そして健診が終わりかけてきた頃、その人はやって来た。
「あ、歩ちゃんいた。久しぶり」
高倉さんの知り合いなのか親しげな口調で採血のところにきたその人は私の前に座る。
な、なんで。
高倉さんの知り合いならそっちに座ってくれてもいいのに。