健康診断の甘い罠

なんか、ちょっと……こ、怖いかもしれない。


「そう、です。四月に入社したばかりで」


震える声でそう答える私にその人は楽しそうに微笑む。


「ふうん、歩ちゃんの後輩か。かわいいね」


そう言われてビクッとしてしまう私にその人は目を丸くして首を傾げるけど、またすぐに微笑む。


なんか、全部見透かされてるみたいで、やっぱりちょっと怖い。


「結城さん、千紗ちゃんに絡まないでください。はい、千紗ちゃんスピッツ」


高倉さんにスピッツを渡されてハッとする。そうだ、お仕事、お仕事。


スピッツのシールを見て名前を確認する。


「結城和弥さんですね。血液とりますので、ちょっとぎゅっと締め……あ、ボールペン出してもらってもいいですか?」


駆血帯を巻こうとすると腕のところにあるポケットに入っていたボールペンが邪魔で巻けない。


巻いたら多分、結城さんが痛いと思う。


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