健康診断の甘い罠
「あ、ごめんね」
そう言ってボールペンを机の上に出してくれた結城さんの腕に駆血帯を巻く。
じっと腕を見ていた私は高倉さんを振り返った。
「高倉さん、細いです」
そう言うと高倉さんが結城さんの腕を覗きこんで苦笑いした。
「意外と血管細いんですね、結城さん」
高倉さんがそう言うと結城さんも苦笑いして高倉さんをちょっと睨む。
「意外とって何。なんか失礼じゃない?」
替わってもらう気満々の私に高倉さんはニコッと笑う。
「大丈夫。結城さんだから失敗してもいいよ、千紗ちゃん」
そう言って高倉さんが結城さんの腕を巻いてある駆血帯を一回外した。
「歩ちゃん、俺に対して冷たくない?」
「そんなことありますけど。ちょっと反対の手も見せてください」
そう言う高倉さんに結城さんはひどいと言って楽しそうに笑う。なんか、本当に親しそう。