健康診断の甘い罠

「俺に恋したいと思わせたのは歩ちゃんだし、色んなきっかけをくれた人だから。千紗と会わせてくれたのも歩ちゃんだしね」


それはきっと私が和弥くんと出会う前にあった出来事で。私はそれを知らない。


やっぱり和弥くんは高倉さんの事好きなんだろうか。


胸がズキズキして、和弥くんに高倉さんの名前を呼ばないで欲しいと思ってしまう。


大好きな先輩なのに、そんなことを思う自分がすごく嫌で私はぎゅっと和弥くんに抱きついた。


「どうしたの、千紗?」


「……何でもない」


そう言った私に何も聞かず、和弥くんは私を抱きしめる。


「もっとキスする?」


そう言われて頬を撫でられて、私は頷いた。


高倉さんに、これまでこうして和弥くんに抱きしめられてきた他の女(ヒト)に、私は嫉妬してる。


嫌だ、こんな気持ちになるのは。こんな自分を私は知らない。


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