健康診断の甘い罠

「だから、そういうことを言って絡まないでください。この人ちょっと危ないけど。大丈夫だから、千紗ちゃん頑張って」


「危ないって。……まあ、否定はしないけど」


高倉さんの言葉に苦笑いしてる結城さんの腕をさすって血管を出やすくしながら私は頷く。


「は、はい。頑張ってみます」


そう返事をしてよく確認して、消毒綿で皮膚を拭いてから注射器を刺す。


血液の逆流があってホッとして注射器を引くけど、途中まで出てた血液が出なくなってしまった。


「た、高倉さん。引けなくなっちゃいました」


そう言った私の手元を高倉さんが覗きこむ。


「ちょっと結城さん」


「え?俺のせい?」


いや、なんか変な汗出てきた。


高倉さんが血液が流れやすくなるように血管を撫でてくれるけど、全然出てこない。


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