健康診断の甘い罠

思えばこの頃に危険察知能力が鍛えられて、逃げ足が速くなった気がする。


中学生になってからも先生にキスされそうになったり、私のことを小学生の頃からいじめてた同級生に抱きつかれそうになったりそういう事が何度もあった。


嫌で逃げる私に、必ず、あの人達は私が悪いと言った。


そうやって何回も私が悪いと言われると本当に私が悪いのかもと思うようになって、高校は女子校に進んだ。


男の先生もいたけど、大分危険を察知できるようになっていた私は無事に高校も卒業して看護学校に進学した。


この頃、母が再婚した。


その義理の父親が、舐めるような視線で私を見ていることに気付いて、それが気持ち悪くて私は家にいづらくなってしまった。


母もそれに気付いたみたいで、私を嫌悪の目で見るようになった。


「千紗、あんた家出なさい。お金は出してあげるから。やっと幸せになろうとしてるのよ。誰のために苦労してきたと思ってるの?」


そう言った母の冷たい目を、私は忘れない。


< 159 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop