健康診断の甘い罠

「愛されてると思うけどな。あの結城さんが自ら会いに来るんだもん。行っておいで」


笑顔で一ノ瀬さんにそう言われて、頷いた私は健診会場の外に出る。


「あ、千紗」


名前を呼ばれて振り返ると、作業着姿の和弥くんが笑顔で立っていて私を手招きする。


「お疲れ様。白衣姿もかわいいね」


駆け寄った私に和弥くんがそう言って微笑むけど、なぜだか心配そうに私の顔を覗きこんでくる。


「千紗、今日何の検査やってるの?」


そう聞かれて私は首を傾げる。和弥くんはもう健診終わってるはずだけど。


「聴力だけど……」


そう答えると和弥くんが顔をしかめた。


それからまた心配そうな顔で私の顔を覗きこんでくる。


「やっぱり。若い奴らが聴力やってる子がすごいかわいいって騒いでたから。声かけられたりしてない?」


「え?か、かけられてないよ」


そう言われて慌てて首を横に振る。検査に必死だったけど、絡んでくる人もいなかったし。


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