健康診断の甘い罠

「それにしても……高倉さんといい健診センターの看護師さんてそんなに男に餓えてるの?健診先の男を物色して回ってるのかしら」


そう言われてかあっと顔が熱くなる。まわりからクスクスという笑い声が聞こえて、ぐっと唇を噛んだ。


なんで、こんな事言われなくちゃいけないんだろう。


「……失礼します」


そう思うけど何も言い返せなくて、引き返そうとしたらその女の人が更に言葉を重ねる。


「結城さんは危ないからやめた方がいいわよ。先輩の奥さんでも手を出すような人だから」


そう言われて驚いて振り返ると、その人は意地悪そうな笑みを浮かべて私を見ている。


「ひどい男に引っ掛かって泣いたら可哀想だと思って言ってあげてるのよ」


和弥くんは、そんなひどい男なんかじゃない。


そう言いたいけど、言えなかった。


ここは健診先で、この人達はうちの会社のお客様だ。


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