健康診断の甘い罠

「大丈夫です。お仕事ですから、頑張ります」


そう言った私を一ノ瀬さんがぎゅうっと抱きしめる。


「本当にいい子だね、千紗ちゃん。うん、頑張ろうね」


そう言って励まされて私は聴力検査をしている部屋に入る。


一人になると、さっきの事を考えてしまう。


やっぱりあの女の人の言っていた先輩の奥さんて高倉さんのことなんだろうか。


やっぱり和弥くんにとって高倉さんて……。


だけどあの人が言ってた和弥くんは私の知ってる和弥くんとは全然違う。


だから、和弥くんにちゃんと聞いてからじゃないと何も信じちゃいけない。


そう考えてぶるぶると頭を振る。


ダメだ、仕事中なんだからこんなこと考えてる場合じゃない。


そう思った私は仕事を始めるべく顔を軽く叩いた。


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