健康診断の甘い罠
駆血帯を外してから注射器を抜いてホッとする私に高倉さんが笑いかけてくれる。
私も微笑み返してハッとして結城さんを見る。
「あの、すいませんでした。二回も」
謝ると結城さんも、ニコッと笑ってくれてホッとする。
何か、ちゃんと笑うと結城さんて印象変わるかもしれない。
結城さんて不思議な人だな。
「大丈夫だから。気にしないで」
笑ってくれた結城さんに安心してして絆創膏を貼って五分間圧迫して止血してくださいと説明してから立ち上がる結城さんに用紙を渡す。
「次はレントゲンなので、外のバスにお願いします」
頷いた結城さんの猫みたいな目が、すっと細められてなぜだか背筋がゾクリとする。
さっきまで笑っていた人と別人みたいだ。