健康診断の甘い罠
沈んだ気持ちを必死に隠して私は高倉さんの旦那さんに微笑んだ。
「い、いえ、大丈夫です。検査始めますね」
まさか旦那さんに高倉さんと結城さんの事聞くわけにもいかないし。
心配そうに私を見ていた旦那さんだけど、ヘッドフォンを耳につけた。
「右から検査始めますね」
そう言って私は検査を始めた。1000Hzから始めて、2000Hz、4000Hz、8000Hzまでいったらもう一度1000Hzに戻って同じ±10dbなら大丈夫でそれ以上のズレがある時はもう一度最初から行う。
最後に500Hzの検査をして左も同じように行う。
「終わりです。お疲れ様でした」
そう声をかけると音に集中するために目をつぶっていた旦那さんは目を開けた。そしてやっぱり私の事を心配そうに見ている。
「ねえ、本当に大丈夫?なんか、俺がけしかけた手前ちょっと責任感じてるんだけど」
けしかけたって、何だろう。和弥くんを紹介したことを言ってるのかな。