健康診断の甘い罠
「……俺の口から聞くより、結城の口から聞いた方がいいよね。しかしあいつ、あんなに勘がいいくせに何やってんだか」
そう言って眉間にシワを寄せる高倉さんの旦那さんに慌てて言い訳を口にする。
「あ、あの。ちゃんと自分で聞くので、泣きそうになったのとか……和弥くんに言わないでもらえますか?和弥くんの口から聞いた事を信じたいとは思ってるんです。ちょっとグラグラしちゃいましたけど、本当にそう思ってるんです」
私の言葉に一瞬目を見開いた旦那さんが、満面の笑顔で私を見る。
「本当に、山口さんはいい子だね。歩が結城にはもったいないって言ってた意味が分かった。本当にあいつにはもったいないな」
そう言って旦那さんは立ち上がって、私を見て優しく微笑む。