健康診断の甘い罠

「ち、千紗！？ちょっ……」


和弥くんの慌てた声が聞こえたけど、無視して部屋の鍵をかける。


「千紗、ちょっと出てきてよ。俺の話聞いて」


そう言われるけど、今はとても和弥くんの顔を見れそうにない。


「やだ」


過去は変えられないのは分かってる。こんな事を考えるのは意味がない事だと分かるのに、自分の感情を制御できなくて……自分でもどうしていいか分からない。


和弥くんがたくさんの女の人とそういう事をしてきたのは知っているけど、それは私が知らない人達だからまだいい。


いや、よくはないけど。仕方ないのかなって自分を納得させられる。


だけど、高倉さんは知ってる人だから。そういう関係はなかったと知っていても抱きしめたりほっぺにチューしてたと知ったら想像できてしまう。


私に触れてるみたいに、高倉さんにも触れたんだろうか。