健康診断の甘い罠
そのまま結城さんは行ってしまったけど、なんか優しいのかなんなのか、本当によく分からない人だった。
「あ、結城さんボールペン忘れてるし」
高倉さんにそう言われて机を見ると、確かにボールペンがそこに置いたままになっている。
「あ、私届けてきますね」
そう言って急いで外に出ると、結城さんはレントゲンのバスの前に立っていた。
「ゆ、結城さん!忘れ物です!」
そう言うと振り返った結城さんがなぜだか嬉しそうに笑って私の方に歩いてくる。
私も急いで届けようと走り出して、何かにつまづいてしまう。
「きゃっ!」
転ぶと思って、ぎゅっと目を瞑ってしまった私を何か温かいものが包み込んでくれている。
ふわりといい香りが私を包み込んだ。
目を開けると目の前には作業着に包まれた胸があって、私の体を逞しい腕が支えている。