健康診断の甘い罠
「確かに歩ちゃんはある意味では特別な存在だよ。こういう女もいるんだって、思わせてくれた人だから。でも、高倉さんの事を真っ直ぐに好きな歩ちゃんにあの時の俺は惹かれたんだよ。あれで俺にぐらついてたらまた女に幻滅してたかも」
和弥くんの口から特別という言葉が出てまた胸が痛くて苦しくなる。
やっぱり和弥くんにとって高倉さんは特別な存在だったんだ。
「……私が高倉さんの後輩だから、好きになろうとしてくれたの?」
そう言ったら目に溜まった涙が頬に流れた。
声、震えちゃってる。もし、そうだったら……どうしたらいいんだろう。
「千紗、それでそんなに不安になってたの?……ちょっと心外だな。俺が千紗のこと本気で好きなのは伝わってると思ってたのに。そうなんだ」
何だか一人で納得してる和弥くんが、何かしてるのかドアからカチャカチャ音がする。
なんだか嫌な予感がして私は部屋の奥に逃げた。