健康診断の甘い罠
やだやだ、絶対ひどい顔してるから見せたくない。
「え、ちょ……千紗。ほんとに俺の事嫌いになっちゃったの?」
不安そうな声でそう言われて心が揺れる。
ちょっと嫌いは……言いすぎたかもしれない。
私も和弥くんに嫌いって言われたらすごくショックだ。
これは訂正しよう。
「……嫌いにはなってないけど。しばらく会わない」
そう口にすると和弥くんがまた焦った声を出す。
「え!?それはすごく嫌なんだけど、本気で?」
私ばっかり和弥くんの思惑通りになっていて振り回されていて、たまには和弥くんも振り回されちゃえばいいんだ。
今回ばかりは、和弥くんの思い通りにはなってあげない。
だって私、たくさん悩んだし、苦しかった。
これは怒ってもいいところだよね。
「本気の本気だもん。私、いっぱい嫌な気持ちになったんだから」
うう、涙声になっちゃう。泣きたくないのに。泣くのは何か卑怯な気がするから。
色んな気持ちが絡み合って今、すごくぐちゃぐちゃだ。