健康診断の甘い罠
布団の上から、私のことを覆い被さるように抱きしめた和弥くんが不安そうな声を出す。
「ねえ、一個だけ聞いていい?俺の事好き?嫌いになってない?」
う、やっぱり嫌いは言い過ぎだった。
私も和弥くんにそう言われたらショックだから、ちゃんと謝らなきゃ。
「嫌いって言ってごめんなさい。和弥くんの事、好き」
好きじゃなかったらこんな風にはならない。和弥くんのことが、すごく好きだ。
「千紗……俺も好き。本当にごめん」
和弥くんがまた深いため息をついて私から離れて布団の上から私の頭を撫でる。
「じゃあ、帰るね」
そう言われて少しだけ胸がぎゅっとなる。引き止めたい気持ちを我慢して、私は言葉を絞り出す。
「……気を付けてね」
そう言うと少し笑った和弥くんが部屋を出て行く。
玄関のドアが閉まった音がして、私は布団から出てハアッとため息をついた。