健康診断の甘い罠

転びそうになった私を結城さんが受け止めてくれたらしい。


「あぶな……大丈夫?」


頭の上から聞こえる低い声に身体がビクリと震えた。


「あ、ご、ごめんなさっ……」


慌てて結城さんから離れて、ガタガタと震え出した身体を自分の手で抱きしめる。


今のはただの事故なんだから。結城さんは私を助けてくれただけだ。


だから落ち着いて、落ち着かないと……変に思われてしまう。


結城さんが、私の様子を少し驚いたように見ていたけど、なぜか困ったように微笑んだ。


「……千紗ちゃん、怖いんだ」


そう言われてギクッとして顔を上げると、私を見て目を細めた結城さんが笑った。


その顔になぜだか背筋がゾクリとする。


なんだろう、纏う雰囲気が変わった気がする。


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