健康診断の甘い罠

「なんか、最初に見た時に予感がしたからかな。だから、考えといて。さっき言ったこと、全部本気だから。また会ったときに、答え聞くね」


私の手から忘れ物のボールペンを取って、結城さんはくるりと背中を見せる。


レントゲンのバスに入っていくその姿を呆然と見送って、ハッとした私は健診会場に戻った。


何か、夢か幻でも見たのかもしれない。


今、起こったことが何だか現実離れしていていまいち頭がついていかない。


戻ってきた私を見て、高倉さんが心配そうに私を見る。


「千紗ちゃん、遅かったけど大丈夫?結城さんに絡まれなかった?」


高倉さんの口からあの人の名前が出てドキッとする。


やっぱり、夢でも幻でもなかった……のかな。


「あ、大丈夫です。あの人、高倉さんのお知り合いなんですよね?」


私がそう聞くと高倉さんは微妙な顔で笑っている。


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