健康診断の甘い罠

「……え?」


驚いて目を見開く私に高倉さんは苦笑いする。


「千紗ちゃんが嫌なら断ってもいいから。ちょっと宗一郎さんが参ってるけど全然大丈夫だから」


こないだの健診から二週間くらい経ってからの思いがけない話に私は固まってしまう。


結城さんが、私に会いたがっているらしい。


こないだのあれ、やっぱり本気だったのかな。


「え?結城さんてあの、結城さんですよね?」


「うん、そう。あの結城さん」


一緒に聞いてた一ノ瀬さんもそう言って驚いた顔をする。


一ノ瀬さんも結城さんのこと知ってるのかな?


首を傾げる私を、なぜか顔を見合わせた一ノ瀬さんと高倉さんが同情した目で見つめてくる。


「な、なんですか。その目」


「ん、いや……私はよく知らないけど。結城さんて、ね。狙ったら獲物は逃さなそうというか」


そう言って本気で同情した目で見つめてくる一ノ瀬さんに私の顔も引きつる。


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