健康診断の甘い罠
千紗は俺に、たくさんの初めてをくれた。
初めてちゃんとデートした。初めて手を繋いで歩いた。初めてお揃いのものを持った。
初めてのキスに、初めての夜の何とも言えない忘れられない幸福感を思い出す。
だけどあの時よりも、今が幸せだと思う。
隣で幸せそうな笑顔で俺を見上げる千紗を見て、心が喜びで満ち溢れるのを感じた。
写真を撮るために予約したフォトスタジオに来て一旦千紗と別れた俺は、やっぱり嫌だと思いながら選んだタキシードを着る。
髪を整えてもらって鏡に映った自分を見て苦笑いしてしまう。
白は絶対に似合わないと思ったから濃いグレイの光沢のあるタキシードにしたけど、やっぱり柄じゃない。
違和感バリバリで全然似合ってる気がしないわ。