健康診断の甘い罠

「千紗ちゃん、頑張ってね」


そう言われるけど何を頑張るのかよく分からない。


「そっか。……結城さんかぁ」


「ね、結城さんなんだよ」


先輩二人にまた同情した目で見られて、ただただ私は困惑する。


「もう、だから……何なんですか」


そんな風に見られると段々と不安でたまらなくなってきてしまう。


「ごめん、ごめん。ま、でも私達が見てる結城さんが本当の結城さんとも限らないから」


そう言って二人は笑顔を見せる。この二人が見てる結城さんて、どんなんなんだろう。

ちょっと聞いてみたいけど聞くのが怖い気もする。


「頑張って、千紗ちゃん」


先輩二人から女から見てもかわいいと思う笑顔でそう言われて、私はかなり不安になりながらその日を迎えた。



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