健康診断の甘い罠
そして健診が始まって、私は高倉さんが言う通りお客さんをジャガイモ、カボチャだと思って必死に採血をしている。
むしろ血管しか見てない。
一発でとってね、とか痛くないようにとか、たまに変なプレッシャーをかけられつつ頑張って採血をする。
私より高倉さんの方が大変そうだ。色んな人に旦那さんとのことを言われてるし。
高倉さんの旦那さんは、高倉さんより一回り以上年上らしく若くてかわいい奥さんだと羨ましがられてて高倉さんはひたすら愛想笑いをしている。
すごい大変そうだけど、ちゃんと対応してる高倉さんをすごいなと思った。
そうしてるうちに何とか午前中の健診が終わって、私はハアッと息を吐いた。
そんな私の背中を高倉さんがポンッと叩く。
「お疲れ様。全然大丈夫だったよ、千紗ちゃん」
笑顔でそう言ってくれる高倉さんにちょっと泣きそうになりながら私は首を横に振る。