健康診断の甘い罠
「いやいや、大丈夫じゃないですけど。でも、高倉さんの方が大変そうでしたね」
そう言うと高倉さんは苦笑いをしながら覚悟してきたからね、と言った。
「旦那さんは今日は受けないんですか?」
「うん。さすがに恥ずかしいから、私がいない日に受けてもらうよ」
そっか、確かに自分の旦那さんが健診受けに来たら恥ずかしいかもな。
私が結婚する日なんて、絶対来ないと思うけど。
男の人のことを信用できないし、気持ち悪いと思ってしまう。
今日もからかうみたいに話しかけられるとどう反応していいか分からなくて大分高倉さんに助けてもらっちゃったし。
『お前が悪いんだからな』
『君が悪いんだよ』
昔の嫌な記憶が甦り、背筋がゾクゾクしてくる。
私はその記憶を追い出して持参してきたお弁当を持つ。