健康診断の甘い罠
「ほっぺにチューしていい?」
思いがけないその言葉に驚いて目を見開く私に和弥くんは不安そうに視線を揺らす。
「無理はしなくていいけど」
う、そういう顔されるとちょっとダメかもしれない。
お礼をしたいと言ったのは私で、本当にそう思ってるのに。
「い、いいよ」
それがお礼になるならと頷いた私を見て、和弥くんはニヤッと笑う。
あれ?もしかしてこれはまたはめられたかもしれない。
「じゃ、遠慮なく」
そう言った和弥くんの顔が近付いてきて、思わずぎゅっと目を瞑る。
和弥くんの手が左頬と肩に触れて、香水の香りが鼻孔をかすめて和弥くんが近付いてきたのが分かった。
柔らかくて温かい感触が頬に触れて、チュッと音をたてて離れていく。
目を開くと、間近に和弥くんの顔があってビックリするけど……怖くはない。