お兄ちゃん先生

先生としてのお兄ちゃん

「楠木(くすのき)さん、おはよっ!」

後ろから声を掛けられた。毎朝、この声を聞く度にちょっとゆううつになる。明るいのはいいんだけど、その明るさが少しウザいというか…

「…おはよ」

私が返すと、いつの間にか私の前に回りこんでいたその子はニッコリ微笑んだ。涙ぼくろが可愛いけど、私はちょっとあざとさを感じてしまう。

「今日は髪、耳にかけてるんだねっ」

その子――内川乃々(のの)は、こんなふうにどうでもいい変化に気づく。そんなこと考えてるヒマがあるなら勉強したらいいのに。

内川さんに言わせると「だって勉強できる子ってカワイくないじゃん」らしいけど。なんか嫌味言われた気分。
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