線香花火
「いらっしゃいませ~っ」

思わず見が引く。僕からすればこの接客は、「いらっしゃいませ…(威圧)」としか聞こえない。さっさと買ってしまおう。

「ありがとうございました~っ」
雑に礼をし、店を後にした。

さて、どこでするかが問題だ。
家出すればおばさんがうるさいだろうし、だからと言って友達なんているはずもない。

…仕方ない。
そこらの公園でしよう。

そこへ向かった僕は公園のベンチに座り、さっき死ぬ気で買ってきた花火を開封する。…あれ、急いでたせいか、線香花火だ、これ。

インパクトはあまり無いが、僕にとってはまあ、相性抜群だな。静かで綺麗だし。

ぱちぱちと音を立てて燃える線香花火を見ていると、あることに気付く。

僕ってそういえばやばくないか。

だって、受験生が夜中に公園で一人、花火をしているんだ。しかもこの外見だ。ただの不審者だ。

…どうしよう。これじゃあ、そのうち誰かに…


「あの…」

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