線香花火
「見つけた…」

‘ 森田 ’という名前のある家を探し回って、どれだけたっただろう。

今、それは目の前にある。


インターホンを押すことに戸惑っていると、中から人が出てきた。

「…誰?」

「あ…透花さんの同級生の者で森本夏生とい」

「お姉ちゃんのこと、どうせ何も知らなかったんでしょ」

「…へ?」

「何も知らなかったくせに…知ろうともしなかったくせに、今更来ないで!!!」

「…」

図星、かもしれない。彼女のこと、何も知らなかった。こうして家を訪ねたのも今日が初めてだ。やっぱり彼女はもういないのかもしれない。でも、思い返せば、彼女はその‘ 何か ’を僕に知らせようとしていた

「…れでも」

「…は?まだ言うの?」

「それでも僕は、彼女が大切だ!!!!」

「…何を今更」

「僕だって思うよ。今更だよね、ごめん。ごめんなさい。」

「…っ」

「だから、最後に一つだけ」

「…なに」

「彼女は今どこにいますか」

「…野山病院…105号室…」

「…っ…ありがとう…!!」



僕は、彼女がどんな状態になっていようとも、彼女に会いたい。

限界だった足も、無理矢理動かして、病院へ向かう。

行き交う人など気にせず、走り抜け、105の文字を探す。

「透花っ…!!」

ドアを力任せに開けた――――――
< 16 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop