線香花火
授業中はいつもより増して上の空で。
僕にも笑いかけて欲しい。なんて我が儘を神様に祈って、今日も夢の中で彼女と会う。




――まだ間に合うから―――――
――――あの子にどうか幸せを―――





どこかから、そんな声がして目が覚めるともう放課後だった。そりゃそうだ。僕に起こしてくれる友達なんていない。教室には僕一人。寂しい気もするが、一人はやっぱり一番落ち着くもんだ。

「はあーー。なんで僕こんなんなんだろ」

独り言も思う存分言える。なんて気持ちいいんだろう。ああ、もうずっとこのまま一人でも...

「私は羨ましいけどな」

「いやいや、何が羨ましいんだ、こんなクズみたいな僕の何が...うぇあああああ?!!!!!!!」

ガタンッという音と共に、僕は椅子から転げ落ちた。

なんだ、なんだなんだなんだ。
落ちたこの場所から死角になって、目の前のそいつの顔が見えない。

とっさに起き上がり、ろくに人の顔を見ようとしたことがない視力Cの僕は、必死にその人が誰かを考えようとした。

考えようとしたんだ。

だけど、一瞬で分かってしまった。

...この僕がだよ?
クラスの人の名前も顔も、ろくに覚えていない僕がだよ?



そう、目の前のそいつは
...彼女だった。
< 4 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop