じれったい
そう言えば、易者が言っていた“チャンス”とは一体何なのだろうか?

もう少しだけ詳しいことを聞きたかったのにな。

近いうちにとは言っていたけど、何月何日にくるのかとか聞きたかったのにな。

「間違っても逃さないように、か…」

赤の他人である私のことをスラスラと当てたのだ。

ここは騙されたと思って、易者の言葉を信じてみよう。

「もう少しで5月も終わるね」

そう言った若菜に、
「そうだね」

私は答えた。

空を見あげると、三日月が出ていた。

もう少し経ったら、この三日月も満月へと変わって行くのだろう。

「私は後何回、同じ文句を聞けばいいのかな…」

“悪い子ではないんだけどね”

私には一体何が欠落していると言うのだろうか?

そう思いながら、私は息を吐いた。
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