じれったい
それまで頬に触れていた玉置常務の手が離れた。

えっ、何?

何事もなかったように前を向いた玉置常務に、私はどうすればいいのかよくわからなかった。

もしかして…いや、もしかしなくても私はからかわれたの?

そんなこと、玉置常務に限ってする訳ないじゃないのよ。

でもどうしてなのだろうか?

昨日は頬にキスしてきたのかと思ったら、今度は頬に手を触れてきた。

そんな出来事があったと言うのに、玉置常務は何事もなかったと言う顔をしている。

――悪い子ではないんだけどね

玉置常務のその態度に、同じ文句が頭の中に浮かんだ。

女としてはおろか、いい子としても私は相手から見られていない。

玉置常務も、そんな気持ちで私を見ているのだろうか?
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