じれったい
どうして何も感じなかったのだろう?

触れられることになれてしまったから?

「この間は君の中に母親への依存があったから、僕に触れられたことに恐怖を感じました。

でも今は、何も感じないでしょう?」

「――ッ…」

何も感じない…と言えばそうなのかも知れないけれど、その代わりと言うように心臓がドキドキと脈打っていた。

この気持ちは、一体何なの?

玉置常務に頬を触れられているだけなのに、心臓がドキドキと早鐘を打っている。

「――玉置、常務…」

上手に彼の名前を呼ぶことができない。

名前を呼んだ私に玉置常務は唇を開くと、
「――莉亜…」

音を発した。

私の名前を呼んだ…?

そのことに驚いたのは一瞬だった。
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