じれったい
気がついたら、私の唇に温かいぬくもりが触れていた。

――えっ…?

何が起こったのか理解できなかった。

玉置常務が私にキスをしている…?

どうして?

何で?

当然キスの経験がない私は、この状況にどう対応していいのか全くわからなかった。

そう思っていたら、玉置常務の唇が私の唇から離れた。

同時に、私の躰がフラリと前へと傾いた。

唇が離れたことに安心したのか突然の出来事に驚いて放心したのかどうかはわからないけれど、
「おっと…」

傾いた私の躰を玉置常務が抱きしめるように受け止めた。

心臓がドキドキと早鐘を打っている。

この音が玉置常務に聞こえていないかと、不安になる。
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