じれったい
トントン…とリズミカルな包丁の音が聞こえているところを見ると、本当になれているみたいだ。

私の視線はお昼の情報番組が流れているテレビに向けられているけれど、放送されている内容なんて入っていないと言うくらいに玉置常務のことが気になって仕方がなかった。

今度はジュージューと炒めている音が聞こえてきた。

そっとキッチンの方に視線を向けると、玉置常務がフライパンを動かしていた。

すごい…。

これはおそらく、私よりもできている…。

玉置常務と目があってしまう前に、私は目をそらした。

どうしよう…。

また心臓がドキドキしてきた…。

テレビなんか見ている場合じゃないよ…。

「できましたよ」

玉置常務の声が耳に入ってきたのと同時に、リビングにはいい匂いがしていた。
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