じれったい
私のシャンプーを使ったんだよね?

普段から使っているシャンプーだけど、玉置常務の髪から香っているそれはまるで違うもののように感じられた。

「優しい人ですね、玉置常務は」

彼の髪から手を離すと、私は呟いた。

あなたが優しいから、私は母への依存を絶ち切ることができた。

――悪い子ではないんだけどね

あなたが教えてくれなかったら、私はずっとわからないままだった。

女としてもいい子としても見られていなかった私を、あなたは変えてくれたんだよ。

あなたが優しいから、母の通夜の席で起こった事件を聞いて欲しいと思った。

つらかったね悲しかったねと、あなたはあの時に私が欲しかった言葉をくれた。
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