じれったい
10・捨てられた手紙
今日はとてもと言うくらいに晴れていて、洗濯物もすぐに乾きそうだ。

「矢萩さん、行きますよ」

朝食の後片付けを済ませた私に、玉置常務が声をかけてきた。

「はい、少し待っててください」

私はタオルで手を拭くと、ソファーのうえに置いていたカバンを手に持った。

「じゃ、行きましょうか」

「はい」

私と玉置常務はリビングを後にした。

台風の翌日、玉置常務が私の家に転がり込んできた。

「矢萩さんの家から通った方がいいと言うことに気づいたんです」

キャリーバックとボストンバックを片手に、玉置常務は言った。

「何より、朝はのんびり出勤できますしね」

玉置常務を追い出すと言う選択は私にはなかった。

まあ、別にいいか。

そんな理由から始まった玉置常務との同居生活は、今日で1週間を迎えた。
< 165 / 273 >

この作品をシェア

pagetop