じれったい
「はい、そうです」

私はソファーから腰をあげると、
「初めまして、矢萩莉亜です」

彼に向かって頭を下げた。

長身で華奢な体型をしていると言うこともあってか、ストライプの模様が入ったグレーのスーツがよく似合っていた。

「『株式会社ファクトリー』の常務取締役の玉置和歳(タマキカズサ)です。

こちらこそ、よろしくお願いします」

えっ、常務なの!?

社長じゃなくて、常務が直々にあいさつをしてきた…!

あまりの事実に固まっていたら、
「どうぞ、こちらへ」

玉置さんが受付の横にあった個室の方へ案内した。

「あ、はい…」

私は返事をすると、玉置さんの後を追った。

話が違うじゃないかって思ったけれど、この人の下で働くことができるならば結果オーライだな。

ラッキーだ、易者の言うことは間違っていなかった。
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